私はこれまで、伝統的に消化器と血液病を専門領域とする北海道大学医学部第三内でさまざまな患者さんや症例と接し、消化器内科医としての徹底したトレーニングを受けてきました。
また、消化器内科系、特に診断と治療が難しい膵臓などでは、本道を代表するひとつとして有名な札幌厚生病院消化器科でも、消化器内科専門医の腕を磨きました。
大病院ではどうしても組織の制約があり、必要に応じた自由な時間の配分で患者さんに接するには限界が伴います。
しかし、消化器の病気は「息の長い治療」を要するものが多く、患者さん自身に病気を理解してもらうとともに、食生活など日常生活レベルに
至るまで、医師が承知したうえでアドバイスすることが治療効果を高めるうえで欠かせません。
そこで、”患者さんとじっくり接して診療を進めていけるクリニック”を目指し、昭和63年7月。ちかま胃腸科内科クリニックをオープンしました。
当クリニックでは、患者さんからじっくり話を聞き、症状をもれなく把握した上でなるべく具体的な話をするよう常につとめています。
例えば慢性膵炎の患者さんなどには、具体的に自分が経験した例を挙げて説明します。病名を挙げて投薬処置を告げただけでは、自分がどう病気と向かい合っていくといいのかは、患者さんにとって分からないままになってしまうからです。
オフィスビル街という立地条件からOLの患者さんを診る機会も多いのですが、若い女性を診察する場合など、腹部の不快感を伴っているケースでは、最終月経がいつかを必ず聞くようにしています。本人も気づかずに妊娠していることがあるためです。
また、肥満ぎみで痛みを伴う場合「胆石を念頭に診察を進める」といった具合で、診察に時間をかけた問診が大切だと考えています。
その他にも、背中の痛みや食後早期に痛みがこないかどうか、嗜好の変化、体重の減少に対する項目も、診断には欠かせないバロメーターと考えています。
難治性の膵臓疾患などでは、他の病気以上に早期発見が治療効果をあげる決め手になるからです。
さらには、家系に糖尿病患者がいない場合でも、ある時期検診で糖尿病または血糖値が高いとされた時は要注意だと考えます。患者さん自身は単におなかが痛いといった感覚で受診されますが、隠された病気があることもあるのです。
だからこそ、詳しく話をし、患者さんがあまり意識していない症状がないかをじっくりと聞くことが大切だと考えているのです。
隠れた病気を早期に発見してこそ専門医の意味があると考えています。
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